建設業で使える助成金まとめ｜人材確保・技能講習・雇用改善に活用できる制度を解説｜労務トラブル解決！社労士が教える経営者向けナレッジメディア

建設業界では人材不足や資金繰りの課題が深刻化しています。例えば、次のような悩みはありませんか。

若手人材の確保や定着が難しい
技能講習や安全対策の費用負担が大きい
申請できる助成金の種類や条件が分からない

この記事では、建設業で利用可能な助成金制度をわかりやすく整理し、種類ごとの概要や申請準備のポイントを解説します。さらに、メリットとデメリットも紹介し、制度を選ぶ際の判断基準を提示します。助成金を活用することで、人材育成や労務環境改善に取り組み、現場の生産性と企業の信頼性を高める一助となるでしょう。

ビジネスパートナーでは、建設業の事業者様向けに助成金の最新制度や活用方法について、実務的な視点で情報提供を行っています。複雑な制度の整理や、自社に合った制度を知りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。

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建設業で活用できる代表的な助成金制度

建設業事業者が活用できる助成金には複数の制度があります。その中でも代表的なものを取り上げ、特徴やポイントを解説します。

人材確保等支援助成金

建設業の人手不足解消を目的とし、働きやすい職場環境の整備や若年者の採用・定着に取り組む企業が対象です。

作業員宿舎の整備
建設キャリアアップシステムの導入
女性や若年層が働きやすい環境整備

といった施策が助成対象となります。

参照：厚労省「人材確保等支援助成金のご案内」

人材開発支援助成金（技能講習・研修支援）

従業員に対して技能講習や資格取得のための訓練を実施した際に支給される助成金です。建設業界では、作業主任者講習や安全衛生教育などの実務的な研修が対象になることが多く、現場の安全性や技術力向上に直結します。

参照：厚労省「人材開発支援助成金」

トライアル雇用助成金

未経験者や若年求職者を試行的に雇用し、その後の正規雇用につなげる取り組みを支援する助成金です。建設業界では技能継承や人材不足の解消に有効で、採用リスクを軽減しながら人材育成に取り組めます。

参照：厚労省「トライアル雇用助成金」

業務改善助成金

従業員の賃金引き上げとあわせて、作業環境改善や業務効率化を行う際に支給される助成金です。例えば「ICT施工機器の導入」「クラウド型勤怠管理システムの活用」などが対象経費となり、生産性向上と人材定着を両立できます。

参照：厚労省「令和7年度業務改善助成金のご案内」

ICT施工導入支援助成金（国交省・自治体制度）

建設DX推進の一環として、国土交通省が進める「i-Construction」施策では、ICT建機やドローン測量の普及・実装が重点施策とされています。これに伴い、自治体レベルでもICT施工や建設DXの導入を支援する独自補助制度が設けられています。
例えば、東京都の「DX推進支援事業」などがその代表例です。

こうした制度を活用することで、現場の効率化・安全性向上・人手不足対策につながります。利用を検討する際は、国交省の最新方針や各自治体の公募要領を必ず確認しましょう。

助成金と補助金の違いと建設業での上手な選び方

建設業の事業主からは「助成金と補助金、どちらを活用すべきか分からない」という声をよく聞きます。両者の違いを理解することが、制度選びの第一歩です。

補助金の代表例としては、以下のものがあります。

小規模事業者持続化補助金：販路開拓や設備導入など、小規模事業者の経営改善を支援。
ものづくり補助金：新製品や新サービスの開発に必要な設備投資やシステム導入に活用可能。

これら補助金は競争率が高く、採択されなければ受給できません。一方、助成金は要件を満たせば比較的受給しやすいのが利点です。

ただし、建設業においては助成金と補助金を組み合わせて活用するケースも少なくありません。例えば、技能講習は助成金を利用し、設備投資は補助金を活用する、といった戦略的な組み合わせです。

次の章では、助成金の申請プロセスを具体的に見ていきましょう。

建設業で助成金を申請する際の流れと必要書類

建設業の助成金申請は、制度ごとに細かな違いはありますが、一般的な流れは以下のとおりです。

制度の公募要領を確認し、自社が対象となるか判断する
事業計画書や見積書など必要書類を準備する
労働局や指定窓口に申請書を提出する
審査を経て、交付決定通知を受け取る
事業実施後、実績報告書を提出する
問題がなければ助成金が支給される

特に注意すべきは「書類不備」です。申請書類の記載漏れや添付資料の不足は、支給遅延や不支給につながる大きなリスクです。また、受給後には事業報告義務があり、報告を怠ると返還を求められる場合もあります。

このように、申請には準備と正確性が求められます。次の章では、助成金を活用するメリットとデメリットを整理し、制度利用を検討する際の判断材料としましょう。

建設業が助成金を活用するメリットとデメリット

助成金の活用は、建設業事業者にとって資金面だけでなく経営基盤の強化にもつながります。しかし、メリットとあわせてデメリットも存在するため、両面を理解しておくことが重要です。

メリット

資金繰りの改善
助成金を活用することで、技能講習の費用や設備投資の一部をまかなえ、自己負担を軽減できます。資金繰りの余裕は新規事業や現場改善への投資に直結します。
人材確保と定着
人材確保等支援助成金やトライアル雇用助成金を利用することで、若年層や未経験者の採用を進めやすくなり、人材不足解消に貢献します。さらに、業務改善助成金による賃金引き上げや労働環境改善は、従業員の定着率を高めます。
生産性・安全性の向上
ICT施工導入支援や人材開発支援助成金を活用すれば、現場の効率化や安全性の向上につながります。最新技術を導入することで競争力を強化できる点も魅力です。

デメリット

申請手続きの煩雑さ
助成金申請は書類作成や条件確認が多く、専門知識が求められます。不備があれば支給が遅れるリスクがあります。
制度要件を満たさない可能性
助成金は「正社員化」「賃金引き上げ」「労務管理体制の改善」など、明確な要件が設けられています。自社の状況によっては条件を満たせず、申請できない場合もあります。
報告義務や返還リスク
受給後も事業報告や賃金台帳の提出など、継続的な報告が必要です。要件を満たせなかった場合には返還を求められることもあるため、計画的な取り組みが欠かせません。