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社労士コラム

就業規則を変更する手順とは?気をつけるポイントも解説

就業規則は法改正や組織の成長に伴い、見直すことがあります。しかし、変更の手順や注意点がわからず、不安を感じている方もいることでしょう。

そこで、本記事では就業規則変更の必要性から具体的な手順、変更時の注意点まで解説します。

就業規則の変更の流れやポイントなどを知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。

 

【江守章二】
社会保険労務士法人ビジネスパートナー代表

結論:就業規則の変更の際は、紛争リスクを見極め、濃密な対策をしてくれる社労士に依頼しましょう!

就業規則の変更は、企業の将来を左右する重要事項でもあるため、十分に検討し、適切に手続きをする必要があります。変更の際は、必ず経験豊富で、より実践的な就業規則を作成できる社労士に依頼するようにしましょう。

理由としては、一般的なフォーマット通りの規則では、予期せぬところで紛争トラブルに発展する可能性があるからです。例えば、近年スマホやSNSの発展によって、機密情報の流出するなどのトラブルが増えてきています。

こういった際に、一般的なフォーマットに沿った就業規則では、SNSに関することが記載されておらず、トラブルを起こした従業員に対して、対処を行うことができません。

ビジネスパートナーでは、過去の事例をもとに、経験に基づいた実践的なアドバイスや就業規則の作成が可能です。

就業規則は、会社を守るための重要なルールブックです。作成や変更だけで満足するのではなく、その後の運用にも目を向けて作成しましょう。

\ 就業規則の変更、見直し、周知 /

 

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就業規則は変更できる

就業規則は、企業の成長や社会情勢の変化に応じて変更できます。これは、職場環境を最適に保つための重要な権利です。ただし、変更には慎重さが求められます。

たとえば、従業員に不利益な変更は避けるべきでしょう。労働基準法を遵守しながら、従業員の理解を得ることが大切です。

また、変更の際は、その必要性と合理性を明確にしましょう。具体的には、法改正への対応や業務効率の向上などが考えられます。

就業規則の変更は、企業と従業員の双方にとって重要な意味を持ちます。適切に行えば、よりよい職場環境の実現につながります。

就業規則を変更するケースはどんなとき?

就業規則を変更するケースについて、主な変更理由を3つ紹介します。それぞれの状況に合わせて、適切な対応が求められます。

労働に関する法律が改正されたとき

労働法制の改正は、就業規則変更の大きな要因です。たとえば、労働基準法の改正があれば、それに合わせて就業規則も更新する必要があります。

最近では、働き方改革関連法の施行により、多くの企業が就業規則を見直しました。具体的には、有給休暇の取得義務化や残業時間の上限規制などが挙げられます。

こうした法改正への対応は、企業にとって義務となります。迅速かつ正確に就業規則を更新し、従業員に周知することが大切です。

労働基準監督署から指導を受けたとき 

労働基準監督署の指導は、就業規則の不備を示します。そのため、指摘された点を速やかに修正し、法令遵守を徹底しましょう。

たとえば、賃金計算方法や労働時間管理に問題があれば、就業規則の該当部分を見直す必要があります。また、休憩時間や休日の規定が不適切な場合も、修正が求められます。

指導を受けた際は、単に指摘された箇所だけでなく、就業規則全体を見直すよい機会です。労働者の権利を守りつつ、適切な労務管理が必要です。

組織拡大により今までの規定では運営が難しくなったとき

企業の成長に伴い、既存の就業規則では対応しきれない場面が出てきます。このような状況では、組織の実態に即した規則の見直しが必要です。

たとえば、従業員数が増えれば、より詳細な労務管理規定が求められるでしょう。また、新しい部署や職種が増えれば、それぞれの役割や責任を明確にする必要があります。

さらに、在宅勤務やフレックスタイム制など、新しい働き方を導入する際も就業規則の変更が必要です。なぜなら、これらの制度を適切に運用するためには、明確なルールが不可欠だからです。

そのため、自社の組織の状況や働き方などを考慮して就業規則を変更する必要があります。

就業規則変更の手順とは

就業規則の変更は、慎重かつ適切に進める必要があります。法令遵守と従業員の理解を得ながら、段階的に進めていきましょう。ここからは、具体的な手順を解説します。

変更案を検討する

まずは就業規則の変更理由を明確にします。法改正への対応や組織の成長に伴う見直しなど、変更の必要性を整理しましょう。

この段階で人事部門や法務部門、場合によっては外部の専門家と協議することをおすすめします。

変更内容を検討する際は、従業員に不利益な変更がないか注意深く確認します。特に賃金や労働時間に関わる変更は慎重に扱う必要があります。また、変更が労働基準法に違反していないかも確認しましょう。

変更案を作成し合意を得る

次は検討結果をもとに、具体的な変更案を作成します。変更案を検討する際は、就業規則変更届の記載項目を意識しながら進めると効率的です。

主な記載項目には以下のようなものがあります。

  • 変更する規定の名称
  • 変更前の内容
  • 変更後の内容
  • 変更理由
  • 適用年月日

また、変更案ができたら、経営陣や関係部署の合意を得てください。この段階で、変更内容の妥当性や実行可能性を再度確認しましょう。

変更内容について意見を聞く

変更案を作成したら、労働者の代表から意見を聞きます。これは労働基準法で定められた工程です。労働組合がある場合は労働組合の代表者、ない場合は従業員の過半数を代表する者から意見を聴取します。

参考:e-GOV法令検索「労働基準法」(第九十条)

意見聴取の際は、変更内容を丁寧に説明し、質問や懸念に誠実に対応しましょう。従業員の理解と協力を得ることが、円滑な変更につながります。

場合によっては、従業員全体に変更内容を説明する機会を設けるのもよいでしょう。事前に周知することで、混乱を防ぐことができます。

変更内容の意見をまとめた意見書を作成

労働者代表から聴取した意見は、意見書としてまとめます。意見書には以下の内容を記載します。

  • 意見聴取の日時
  • 意見聴取の相手方(労働組合名や従業員代表者名)
  • 聴取した意見の要旨

意見書は、単に意見を羅列するだけでなく、それぞれの意見に対する会社の対応や考え方も記載するとよいでしょう。その結果、労働基準監督署への提出時に、変更の合理性をより明確に示せます。

意見書、変更後就業規則、就業規則変更届を所轄労働基準監督署長に提出

最後に、必要書類を労働基準監督署に提出します。提出する書類は以下の3点です。

  1. 意見書
  2. 変更後の就業規則
  3. 就業規則変更届

提出の際は、記載漏れや誤りがないか再度確認しましょう。特に変更届の記載事項に不備がないか注意が必要です。

提出後は、従業員への周知を徹底します。事業場での掲示や社内インフラでの公開など、全従業員が確実に内容を確認できる方法を選びましょう。

変更届の提出期限について

就業規則の変更届には、明確な提出期限が定められていません。しかし、労働基準法施行規則では「遅滞なく」提出するよう求めています。

参考:e-GOV法令検索「労働基準法施行規則」(第四十九条)

ただし、実務上は、変更内容を確定させた後、速やかに提出するのが望ましいでしょう。新しい規則の施行日までに手続きを完了させるのが理想的です。

また、変更の規模や内容によっては、準備に時間がかかる場合もあります。その際は、計画的に進めましょう。たとえば、大幅な変更の場合、従業員への周知期間も考慮に入れる必要があります。

提出が遅れてしまった場合でも、気づいた時点で速やかに対応してください。労働基準監督署に状況を説明し、誠意を持って対応することが大切です。

なお、定期的に就業規則を見直す企業では、年1回や半年に1回など、提出のタイミングを決めておくとよいでしょう。これにより、漏れなく効率的に手続きを進められます。

 

変更届は5年間の保存が義務

就業規則の変更届は、5年間の保存が義務付けられています。これは労働基準法の改正に伴う変更点です。

参考:e-GOV法令検索「労働基準法」(第百九条)

従来は3年間の保存期間でしたが、2020年の法改正により5年に延長されました。この変更は、賃金に関する時効期間の延長と連動しています。

保存方法には紙媒体電子データがあります。電子データで保存する場合は、改ざん防止措置を講じる必要があります。

また、保存期間中は、労働基準監督署の求めに応じて提示できるよう、適切に管理しましょう。これは、労働者の権利を守るための対策でもあります。

なお、変更届だけでなく、意見書や新旧対照表なども同様に保存が必要です。これらの書類は、労使間のトラブル防止にも役立ちます。適切な保存は、コンプライアンスの観点からも重要です。

就業規則は誰の許可が必要?

就業規則の変更は、企業が主体的に行うものですが、一定の手続きが必要です。ここでは、変更に関わる権限や注意点について解説します。

就業規則変更の権限を持つ人 

就業規則の変更権限は、原則として使用者(経営者や会社)にあります。具体的には、代表取締役や人事部門の責任者が中心となって変更を進めます。

ただし、変更内容によっては、取締役会での承認が必要な場合もあります。特に賃金体系の大幅な見直しや労働時間制度の変更など、会社の経営方針に関わる変更の際は、慎重な判断が求められます。

また、先述のとおり、労働基準法では就業規則の作成・変更時に労働者の過半数代表の意見を聴くことを義務付けています。この意見聴取は、変更の許可を得るものではありませんが、重要な手続きです。

従業員の同意は必要ない

就業規則の変更に際して、個々の従業員から同意を得る必要はありません

ただし、これは「従業員の意見を無視してよい」という意味ではありません。変更内容について従業員に十分な説明を行い、理解を得ることが望ましいです。

特に、労働条件を不利益に変更する場合は注意が必要です。変更に合理性があり、周知の手続きを適切に行えば、個別の同意がなくても有効とされる場合がありますが、慎重な対応が求められます。

従業員の生活に影響を与えるような変更は避ける

就業規則の変更は、従業員の労働条件に直結します。そのため、従業員の生活に大きな影響を与えるような変更は避けましょう。

たとえば、突然の賃金カットや労働時間の大幅な延長など、従業員に著しい不利益をもたらす変更は問題となる可能性が高いです。このような変更を行う場合は、十分な説明と合理的な理由が必要です。

また、変更の必要性や合理性を客観的に示すことも大切です。社会情勢の変化や会社の経営状況など、変更の背景を明確に説明しましょう。

そのため、変更内容によっては、説明会の開催や個別面談なども検討してください。従業員の理解を深めることで、スムーズな運用につながります。

就業規則を変更する際に気をつけるポイント

就業規則の変更は、企業と従業員の双方に大きな影響を与えます。適切な変更を行うためには、いくつかのポイントに注意を払う必要があります。ここでは、特に重要な2つのポイントについて解説します。

職場の合理性を重視する

就業規則の変更には、必ず合理的な理由が必要です。単に会社の都合だけでなく、従業員にとっても納得できる内容でなければなりません。

たとえば、労働時間の変更を行う場合、業務効率の向上や従業員のワークライフバランスの改善など、明確なメリットを示すことが大切です。また、賃金制度の変更では、公平性や透明性の確保を重視しましょう。

変更の必要性を説明する際は、具体的なデータや事例を用いると効果的です。具体的には、業界の動向や他社の事例、従業員アンケートの結果などを活用しましょう。

また、変更によって生じる不利益については、代替措置を検討することもポイントです。たとえば、残業時間の削減に伴い基本給を下げる場合、能力給の導入など、従業員のモチベーションを維持する工夫が必要です。

就業規則を周知する

就業規則の変更後、従業員への周知は必須です。労働基準法第百六条では、就業規則を労働者に周知させる義務を使用者に課しています。

参考:e-GOV法令検索「労働基準法」(第百六条)

周知の方法には、以下のようなものがあります。

  1. 事業場(社内)の見やすい場所への掲示
  2. 書面での交付・配布
  3. 磁気テープ、磁気ディスク、その他これらに準ずるものに記録し、かつ、各労働者が随時確認できる機器の設置

特に注意すべきは、パートタイマーやアルバイトなど、雇用形態にかかわらず全ての労働者に周知する必要がある点です。正社員だけでなく、非正規雇用の従業員にも漏れなく周知しましょう。

就業規則の変更は、労使間の信頼関係を左右する重要な事項です。合理性の確保と適切な周知を心がけることで、従業員の理解と協力を得やすくなります。

就業規則はよく検討した上で適切に変更することが大切

就業規則の変更は、企業の将来を左右することであり、十分な検討と適切な手続きが不可欠です。

そのため、変更の目的を明確にする必要があります。単なる経費削減ではなく、企業の持続的成長や従業員の働きがいの向上など、前向きな理由が望ましいです。

次に、変更内容の法的妥当性を確認してください。労働関連法規に精通した専門家のアドバイスを受けるのも方法の1つです。

また、従業員の反応を予測し、対策を練ることもポイントです。特に不利益変更の場合、丁寧な説明を行い、従業員から納得してもらう必要があります。

それから、変更後の運用面にも目を向けましょう。新しい規則が現場で機能するか、事前にシミュレーションすることをおすすめします。

さらに、変更後のフォローアップも大切です。定期的に効果を検証し、必要に応じて微調整を行うことで、よりよい就業規則になります。

このような慎重な変更プロセスによって、企業と従業員双方にとって有益な就業規則が完成します。

まとめ

就業規則の変更は、慎重かつ適切に進める必要があります。変更の必要性を明確にし、法令を遵守しながら、従業員の理解を得ることが重要です。

具体的な手順を踏み、労働基準監督署への届出や従業員への周知を確実に行いましょう。また、変更後も定期的に効果を検証し、必要に応じて調整することが大切です。

なお、当法人では、就業規則の変更についての進め方や意見書のとりまとめなど、労務関係の相談を受けております。専門家のサポートを得て、円滑な就業規則の変更を実現しましょう。

ABOUT ME
【監修者】江守章二
【役職】社会保険労務士法人ビジネスパートナー代表社員|株式会社インフィニティ代表取締役 【経歴】 中小企業への生産性向上を支援する中、さらなるサポートを行うため、2017年12月に社会保険労務士法人ビジネスパートナーを設立。 経営者でありながら社会保険労務士でもある立場で、助成金サポート、採用支援、組織マネジメント、労務相談を行う。特に業務のDX化サポートを得意とし、顧問先のHR部門の改革を実現した企業へ贈られる「Money Forward Cloud Award 2024」では京都府では唯一の社会保険労務士事務所として選出。 【保有資格】 社会保険労務士/行政書士/キャリアコンサルタント/宅建主任士